戸建てリノベ
[山口市]宮野上
中古住宅購入に向け物件の見学です。築40年の木造住宅ということで、内装の傷みや設備の老朽化が目立ちます。築年数からも、現行の耐震基準は満たしてない構造材自体はしっかりとしている印象。計画次第では面白いリノベーションができるのではないかという予感がしました。
ホームインスペクションを実施しました。広縁付近の天井部に雨漏りの跡が確認できましたが、その他は構造の傾き含め、概ね大きな問題はありませんでした。
室内の解体工事が始まりました。設計図に基づいて解体作業を進めていきます。リフォーム・リノベーション工事の場合、大量の産業廃棄物が発生しますが、材質毎に仕分けして処分場に運搬持ち込みします。
解体工事も進み、天井も全てなくなりました。上部からは家の間取りの様子がよくわかります。
浴室を解体すると、隣接していた柱や土台に腐れを確認しました。これは、浴室のタイル目地などから浴室内の水が染み出し、長年に渡って木材が湿潤な状況に置かれたのが原因と考えられます。不良な木材は全て撤去し差し替えを行います。
解体工事をすることで全貌が明らかになっていく構造躯体。当時の図面と現況に食い違いがないかどうかを確認していきます。
今回のリノベーションの大きなポイントのひとつが2階を減築して平屋にすることです。2階部分の瓦を撤去後、屋根下地も解体。最終的に2階部分の軸組みも撤去します。
遂に2階部分がなくなりました。
撤去した2階部分の木材を新しく作る屋根の構造材として再利用するため、現地で加工を行っていきます。ホゾなどを新しく掘ることで、これからも問題なく屋根の小屋組みとして使用できます。
2階を撤去した部分の小屋組み作業も終わり、垂木の上に屋根断熱材を施工。更にその上に野地板という屋根下地をつくっていきます。ここまでくると、これまで2階があったとは思えません。
基礎の補強を行うため鉄筋を施工しています。既存の基礎に抱き合わせで新しい基礎をつくります。こうすることにより、古い基礎と新しい基礎が一体化し、耐震性能も兼ね備えた強固な基礎へと生まれ変わります。
屋根はアスファルトルーフィングというシートを施工していきます。この材料は雨を透過しな素材でできており、万一、仕上げ材からその下に雨水が侵入しても、この層でシャットアウトすることができます。
既存基礎の横に新規で基礎コンクリートを施工しました。
今度の屋根はガルバリウム鋼板の縦はぜ葺き。定期的な塗装は必要になるものの、瓦に比べて軽量なので、耐震面から考えると地震に強い屋根と言えます。棟(屋根で一番高い部分)には「棟換気」を設け、外壁通気工法からの外気を抜いていきます。
工事前の瓦とは全く違う印象の外観になりました。
梁や柱、土台などの構造材を金物や筋交いを施工し耐震性能を向上させていきます。既存の構造材も金物で補強します。
外張り断熱材で壁を覆っていきます。断熱材のジョイント部分にはブチルテープを隙間なく丁寧に施工していきます。この施工精度によって住宅の気密は確保されます。
樹脂窓が現場に入ってきました。樹脂窓はこれまでのアルミサッシに比べ熱伝導率が1/1000。冬場、外気によって冷やされるリスクが少なく、結露の抑制に大きな効果を発揮してくれます。
基礎断熱を施工しています。基礎は外気に面する部分の立ち上がり部はもちろんのこと、外部から3尺は土間部分にも張り込みます。こうすることにより外気の影響を受けにくく、夏場の逆転結露の心配がない床下になります。
白いお饅頭みたいなものは「発泡ウレタン」というものです。スプレーすることで断熱材が出てきます。この箇所は基礎と土台を固定するアンカーボルト部分。基礎コンクリートが冷えることにより「熱橋(ヒートブリッジ)」になることを防止しています。
ユニットバスの施工も始まりました。
柱や梁など、構造材の補強作業を行っています。既存の形状に合わせるため、ノミや丸ノコを使い木材を加工していきます。
ユニットバスも組み上がりました。
内装材の工事に入る前に電気配線や水道配管の仕込みを行っていきます。
外部は屋根の軒天の施工が終わりました。杉の上小節(ほとんど節のないもの)は木肌が美しいのが魅力です。
これは「ダイライト」という耐力壁(面材)です。一般的な木材の筋交いに比べ同じ面積でも強度が出るのが特徴です。
こちらが気密測定の様子です。実測値で相当隙間面積C値=0.5。リノベーション物件としての気密としては十分な性能を実現することができました。大工の丁寧な施工が身を結びました。
間取り変更に伴い、柱を撤去した部分の梁を補強していきます。古い梁の下から支えている新しい梁が「助け梁」と言われるものです。柱がなくなることでスパンが広がり、梁に掛かる荷重が増えるので、下から支えて強度を保ちます。
天井と壁の下地をつくっていきます。一定のピッチに並んだ木下地。この下地にプラスターボード(石膏ボード)を施工します。
外壁のサイディングを施工しています。今回の仕上げは「大壁工法」という仕上げで、サイディングのジョイントをパテで埋め、一枚の大きな壁に見せる仕上げです。
こちらにも助け梁を施工するため、既存の柱を加工しています。この柱は構造上撤去することができない柱。慎重に作業を進めます。
これまで天井の上に隠れていた太鼓梁。リノベーション工事後は勾配天井で梁が顕しになります。そこで、梁を磨いて化粧にする作業を行っています。時間の掛かる大変な作業ですが、完成後は意匠的にも存在感のある梁になります。
磨いた化粧丸太を避けながら、天井の羽目板を仕上げていきます。既存の不定形な梁が存在するため、その梁形状に合わせて天井材を加工し合わせながらの作業になります。こちらも根気のいる作業です。
まるで天井から梁が突き出た様にも見える仕上がりです。梁と天井材の取り合いの細工はこれ以上ない仕上がりとなりました。
グリーンに見えるのが導電性のスパンボンド。住まいの電磁波対策をするのに必要となる部材です。このシートを施工しアースを取ることで、その周辺の電化製品から出る電磁波(電場)をカットすることができます。
電磁波測定の中間検査です。壁を張る前に検査することで、万一、電磁波が基準値以下になっていないことが確認できれば手直しができます。今回は対策を行った場所全てで基準値の25v/m以下であることが確認できました。
山口県産の杉フローリングで床を仕上げていきます。天然木のフローリングは合板フローリングと違い幅が10cm程度しかないものを1枚ずつ張っていくという根気のいる作業です。天然木の性質を知り尽くしているセンスの大工は1枚1枚の癖や色味を確認しながら手際よく作業を進めていきます。
寝室と子ども室の壁は「モイス」という素材で仕上げます。吸放湿性能が高く、大工工事で仕上げまでできる素材です。
古い柱を美しく見せるために、板で囲む工事をしています。既存の形状に合わせ木材を加工。それを四面から貼り合わせていきます。仕上がりはこちら。一見、古い柱に板を貼り合わせたとは見えない出来栄えです。太くて美しい柱の完成です。
一枚ものの杉板を式台として施工しました。耳付きといわれる板で、正面の木口が丸太当時の形状で残っているのが魅力です。そこに、同じく杉材を加工した玄関框を施工していきます。
まさに木を知り尽くした職人技です。
いよいよ外部の仕上げ工事に着手しました。まずはシーラーという材料を塗っていきます。この作業をすることで仕上げ材がサイディングにしっかりと定着します。
仕上げは「ベルアート」。まずは骨材入りの塗料を吹付けます。
次にコテで引きずりながら押さえます。
そうすることで、このような美しいテクスチャーが生まれます。
玄関の3連ニッチがカタチになりました。この後、ニッチ内の正面壁に面白い仕掛けを考えています。
和室天井の天然ボードも美しく仕上がりました。市松模様に張った天然ボードは空間に変化をもたらしてくれます。ジョイント部分は竹で押さえました。
玄関収納を造作しています。全てセンスの大工によって作られていきます。今から仕上がりが楽しみです。
こちらは玄関ホールからリビングに向かう廊下の正面の壁です。もちろん天然木。1枚1枚の波打ったデザインの板を張り合わせていくと面白いデザインになります。ここを歩く人のアイキャッチとしてここに施工しました。
玄関の3連ニッチ。ニッチ内の正面の壁には杉の角材を施工しました。木材の厚みを変えることで変化を持たせました。こちらも想像通りの仕上がりです。
いよいよ珪藻土仕上げに入りました。別府弁天池の天然水も汲んできました。
施工はもちろん伊藤さん兄弟。見る見るうちにステキな模様が天井や壁に表現されていきます。
珪藻土工事2日目。勾配天井部分の珪藻土を施工中です。
玄関のニッチも細かい作業になりましたが完璧な出来栄えです!
珪藻土工事最終日。プロジェクターの映像を映す壁は白い珪藻土で仕上げます。珪藻土は光を反射しないので、目に優しく、映像がくっきり鮮明に映し出されるのが大きな特徴です。
最後に遊び心を添えて珪藻土工事完了です!
クロスの施工に入りました。今回使用するのはオガファーザーというエコクロス。オガファーザーはいわゆるウッドチップクロスで、森の木々を有効に利用してつくられる体にやさしい天然壁紙です。紙の中にウッドチップが入っているのが特徴で、調湿も期待できます。
木製建具の搬入及び吊り込みを行っています。木の香り漂う杉材でつくった造作建具。シート貼りの既製品とは違い木のぬくもりを感じるのが大きな魅力です。杉のフローリングとの相性も抜群です!
ダインイングの窓に「ステンドグラス」を入れました。施工は昔からパートナーとして素敵な作品を提供してくれる構作舎の中村さん。今回は差し色に褐色のガラスを提案してくれました。このガラスは東ドイツ時代に現地の職人さんが吹いてつくったガラスらしく、今では入手することができない貴重なもの。本当にありがとうございました。
畳を搬入しました。畳表はもちろん安心・安全な「国産い草」。い草のいい香りが現場に漂うといよいよラストスパートです。
最後の仕上げでハウスクリーニングを行っています。窓ガラスもキレイに拭き上げます。
床の仕上げは「蜜路ワックス」。木のぬくもりはそのままに、撥水効果・汚れ防止を実現してくれます。
テラス屋根を施工しています。雨天でも安心して洗濯物を干すことができるのが人気の理由。ウッド調のテラスで外観にも溶け込むデザインのものを選定しました。
内部は最後の調整。玄関収納内の可動棚の金物を施工しています。
ペレットストーブを設置しました。空間の大きさから言えば能力不足の機種「RS-mini」ですが、気密・断熱をしっかりと行ったこの空間でどこまで対応できるかを実証しようと思っています。
もともとあったアルミテラスの脚を利用して、お隣さんとの間に目隠しの壁をつくりました。プライバシーを保ちつつ、ハンギングバスケットなどを飾る壁としても活躍しそうです。
電磁波測定(完了検査)を実施しました。電磁波(電場)が基準値以下であることが確認できました。
現場レポート